「脱炭素社会の実現」に向けた取り組みが、世界中で急速に進んでいます。
多くの企業が電気の使用量を減らしたり、社用車を電気自動車に切り替えたりといった対策に取り組まれているのではないでしょうか。しかし、地球温暖化の原因となる温室効果ガスを出しているのは、工場や自動車だけではありません。実は、私たちが普段口にしている肉や牛乳を届けてくれる農業・畜産業の現場からも、多くの温室効果ガスが発生しています。
特に今、世界中で大きな問題となっているのが、牛などの家畜が吐くゲップに含まれるメタンガス(CH4)です。「牛のゲップが温暖化に関係しているの?」と驚かれるかもしれません。しかし、環境に配慮した特別な「飼料(家畜のエサ)」の開発により、この問題に対する日本の技術革新が大きな一歩を踏み出しました。
今回は、ゼロプラスがSBT認証取得を支援させていただいた、株式会社佐々木様の素晴らしい取り組みをご紹介します。
今回注目の取り組みを行っている株式会社佐々木様(本社:広島県東広島市)は、自社で農業経営を行う注目の農業法人です。同社の大きな特徴は、太陽光パネルの下のスペースを活用してキノコを栽培する「ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)」を展開されている点です。日陰になりやすいパネル下の環境を活かし、キクラゲなどの菌床栽培を行う先進的な農業を実践されています。
さらに、株式会社佐々木様は農業法人としては非常に珍しく、国際的な環境目標であるSBT認証を取得されました。単に作物を育てるだけでなく、事業全体で温室効果ガスの削減を目指すなど、脱炭素に向けて多様で先進的な取り組みを推進されている企業です。
【株式会社佐々木様ホームページ】https://e-kurage.co.jp/
そもそも、なぜ家畜の出すメタンを減らすことがこれほど重要視されているのでしょうか。私たちがよく耳にする温室効果ガスといえば二酸化炭素(CO2)ですが、実はメタンガスはCO2の約28倍もの温室効果があるとされています。つまり、排出される量がCO2より少なくても、地球温暖化に与えるダメージが非常に大きい気体なのです。
そして、家畜(特に牛や羊などの反芻動物)の胃の中でエサが発酵する際に、大量のメタンが発生します。これがゲップとして空気中に排出されているのです。牛1頭が1日に吐き出すメタンの量(約200〜500L)は、小型の冷蔵庫数台分の容積にも相当します。世界中に何億頭もいる牛たちのゲップを合算すると、その環境負荷は決して無視できない大きさになります。企業の環境対策を進める上で、家畜由来のメタン削減は、世界的な最優先課題となっているのです。
<参考:農研機構 畜産研究部門 研究トピックス「牛のメタン」>
https://www.naro.go.jp/laboratory/nilgs/enteric_methane/index.html

そこで、株式会社佐々木様が新しく開発し、特許出願されたのが「環境配慮型飼料」です。これは、家畜の胃の中で行われる発酵のプロセスに働きかけ、メタンの排出そのものを抑制する画期的なエサです。
驚きのアイデア:「キクラゲ」が原材料!
この環境配慮型飼料の最大のポイントは、自社のソーラーシェアリングで栽培した「キクラゲ」を原材料として活用している点にあります。太陽光発電の下で育てたキクラゲを活用することで、エネルギーの創出と循環型農業、そしてメタン削減という“1石3鳥”の仕組みを実現されたのです。
従来の環境配慮型飼料にあった「3つの課題」を克服
これまでにもメタン削減をうたう飼料は存在しましたが、以下のような課題がありました。
・コストが高い→農家の負担が大きい
・供給スケールが限られる→十分な量を確保しにくい
・家畜の嗜好性(食いつき)が悪い→牛が好んで食べてくれない
株式会社佐々木様が開発した飼料は、これらの課題を見事にクリアしました。高い受容性(家畜が喜んで食べること)と高い環境負荷低減効果の両立を実現し、現場で使いやすい仕組みを構築されています。今後は、この飼料の安定製造と日本全国への普及促進を目指し、ソーラーシェアリング事業とともにさらなる展開が期待されています。
今回は、株式会社佐々木様による「キクラゲを活用した環境配慮型飼料の特許出願」の取り組みをご紹介しました。製造業やIT企業だけでなく、農業という一次産業の現場においても、アイデアと技術によって脱炭素の大きなイノベーションが起きていることがお分かりいただけたかと思います。中小企業の経営層の皆様にとっても、今回の事例には多くのヒントが含まれています。
・自社事業(太陽光発電×キクラゲ栽培)の強みを結びつけ、新たな環境価値を生み出すこと
・環境への配慮を「コスト」で終わらせず、特許やSBT認証といった「自社の信頼・ブランド」へ昇華させること
脱炭素への取り組みは、企業の社会的責任を果たすだけでなく、新たな市場を開拓する強力な武器となります。株式会社佐々木様のように、本業を通じて地球の未来に貢献するチャレンジは、これからの時代を生き抜くすべての企業にとって素晴らしい手本と言えるのではないでしょうか。食とエネルギーの現場から始まる脱炭素の波に、今後もぜひご注目ください。
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