ガソリンだけでなく、家電製品、衣類、医療機器など、私たちの身の回りは石油由来のモノであふれています。そのため、現在のようなイラン情勢に伴う石油やナフサの供給不安は私たちの生活や社会全体に広く影響を及ぼします。
本コラムでは、現在のイラン情勢について整理したうえで、今後進んでいくと考えられる省石油・脱炭素の流れと、それに対して中小企業がどのように対応していくべきかについて解説します。
中東地域では、イラン情勢の緊張がなお続いています。イラン情勢は世界中に様々な影響を及ぼしていますが、その中でも特に注目されているのが世界の原油輸送量の約2割が通過するホルムズ海峡をめぐる動きです。
現在、ホルムズ海峡では、軍事的な緊張や攻撃リスクなどにより、多くの船舶が航行を避けており、事実上の封鎖に近い状況が生じています。その結果、原油輸入の約9割を中東地域に依存している日本では、エネルギーや原材料の供給面で極めて不安定な状況が続いています。
特に製造現場は多くの石油製品であふれており、大きな影響を受けています。ボイラーや乾燥炉では熱が、空調やコンプレッサーには電気が使われており、こうしたエネルギーの供給には石油が欠かせません。石油は製品輸送時の燃料や設備の潤滑油・包装資材等にも幅広く用いられています。そのため、石油の供給不安は最終的な製品価格に波及するだけでなく、生産活動の停止を引き起こす可能性があります。

経済産業省資源エネルギー庁「石油統計情報」を参考に作成
(参考)https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/sekiyuka/pdf/se202603kakji.pdf
今回のイラン情勢によって、浮き彫りになったのは、石油に依存している社会構造のリスクです。そのため今後、世界的には石油供給不安に対するリスクを回避するため、省石油に向けた技術開発がさらに加速していくと考えられます。
脱炭素はこれまで「環境対策」という側面で語られることが多くありました。しかし今後は、環境問題への対応だけではなく、「エネルギー調達リスクへの備え」という経営上の重要課題として位置づけられていくことが予想されます。
特に、エネルギー価格の変動が激しくなる中では、石油使用量を減らせる企業ほど、経営の安定性を確保しやすくなります。今まではエネルギーの使用量を減らすために省エネに取り組むという考え方が一般的でしたが、今回の供給不安を受けて、省エネの取り組みはもちろん、今後は原材料・副資材の削減がより一層重要になっていきます。
エネルギー価格の変動リスクや取引先からの要請も踏まえれば、省エネや脱炭素への取り組みは単なる社会貢献や企業努力の一環ではなく、今後あらゆる企業にとって対応せざるを得ない経営課題となっていくでしょう。
イラン情勢による石油の不足が社会に大きな影響を与えている中で、今後はエネルギー価格の変動リスクを低減させるために、省石油や省エネへの取り組みが重要になっていくと見られます。こうした流れが加速すると大企業から中小企業へ環境配慮の対応が求められていきます。今後の環境変化に備えて今から段階的な取り組みを行っていくことが重要です。
各エネルギーの使用量を可視化してコスト構造やリスクの影響度を把握し、設備更新や運用改善など、実行可能な範囲からエネルギー使用量の削減を進めることが重要です。設備更新には初期投資が必要になりますが、長期的なコスト削減とエネルギーリスクの低減につながります。
省エネ設備や脱炭素化システムの導入に対して、国や自治体では補助金などの支援制度を整備しています。初期投資の負担を抑えながら効率的に取り組みを進めることが可能になるため、省エネ設備等導入予定の方は活用をおすすめします。
石油依存を低減させるためには、原材料や副資材を削減できるような施策を行うことが重要になってきます。歩留まり改善を行うことによって原材料の削減が可能になり、切削油の代替品の使用や、脱脂工程で用いるシンナーをスーパーアルカリイオン水に変更することで、石油依存を緩和することができます。
今後は、社会的に原料の脱炭素化に向けた開発が進められるため、脱炭素に積極的な企業が取引先や金融機関から評価されやすくなる可能性があります。単なるコスト負担としてとらえるのではなく、企業価値向上の機会として考える視点も必要になっていきます。
現在のイラン情勢によって、私たちは改めて石油依存社会のリスクを認識することになりました。今後は供給不安や価格高騰への対策として、省石油・脱炭素の流れがさらに加速していくと予想されます。
こうした変化は大企業だけではなく、中小企業にも確実に影響していきます。そのため、省エネの取り組みに加えて原材料の削減や脱炭素化を少しずつ進めていくことが、今後の経営においてより重要になっていくと考えられます。
複雑なCO2排出量の計算を、
簡易的に行う診断ツールです。
詳細なモニタリング診断も行う
サービスも用意しています。
面倒な入力なしで最短30秒!
詳細を送ってCO2排出量を可視化