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コラム

2025.12.19

高市新内閣における今後の脱炭素の動向を読み解きます!

2025年10月に発足した高市新内閣では、経済成長・エネルギー安全保障・脱炭素の達成を掲げています。中でも脱炭素政策は、単なる環境対策ではなく、GX(グリーントランスフォーメーション)を軸とした産業政策・成長戦略として推進する姿勢が明確で、電力構成、市場構造、中小企業の事業戦略に様々な影響を及ぼすものと見られています。本コラムでは、高市政権の脱炭素・エネルギー自給の方向性や具体的な施策を読み解き、中小企業への波及を検討します。

 

 

今後の脱炭素の方向性

高市内閣の脱炭素政策は、環境目標の達成と経済成長・エネルギー安全保障の両立を重視しています。高市総理は所信表明で、2050年カーボンニュートラルの実現に加え、電力供給の安定化とコスト抑制の重要性を強調し、脱炭素政策を単なる環境対策ではなく経済・成長戦略として位置づけています。
赤澤GX実行推進担当大臣は会見において、再生可能エネルギーと原子力を活用し、特定の電源に依存しないエネルギーミックスの実現を目指すと述べています。エネルギーの安定供給と経済成長、脱炭素を同時に実現し、産業競争力の強化につなげていく方針です。この方針の下、新潟県の柏崎刈羽原発は再稼働に向けた調整が進行中です。2025年11月には知事が再稼働容認の考えを示し、自治体と国が課題解決に向け協議しています。
また、新内閣において環境大臣に就任した石原氏は、就任記者会見において「持続可能な未来を創る」ことをミッションとして掲げています。自然破壊に結びつくような再生可能エネルギーの導入を規制し、ペロブスカイト太陽電池のような新技術の拡大を進めていく方針です。
参考:
石原大臣就任記者会見録 https://www.env.go.jp/annai/kaiken/kaiken_00326.html
赤澤経済産業大臣の就任記者会見の概要 https://www.meti.go.jp/speeches/kaiken/2025/20251022001.html

 

新内閣で想定される施策

2025年11月に閣議決定された総合経済対策では、物価高対策や防災投資と並び、GX投資の推進が重要分野として位置づけられました。この総合経済対策を具体化する形で、令和7年度補正予算案には、GX支援対策費が盛り込まれています。
GX分野全体では、令和7年度補正予算におけるGX推進対策費は約8000億円と、昨年度の約6500億円から大幅に増加しています。昨年度と比較すると、単なる省エネ設備導入の支援だけでなく、サプライチェーン構築のようなGX製品の製造における大規模投資への支援が拡大しています。

・GXサプライチェーン構築支援
・次世代革新炉の開発・建設に向けた技術開発支援
・系統用蓄電池等の電力貯蔵システム導入支援

昨年はGX支援のスタート段階として部分的な設備導入が中心となっていましたが、今年度は構造的な投資支援へと対象範囲が拡大しています。予算額の増加と支援の拡充によって、脱炭素投資の本格的な実行と普及の促進を図る施策であると言えます。

 

中小企業への影響

高市政権の新エネルギー政策が中小企業にもたらす影響は多岐にわたると考えられます。

・ビジネスチャンスの拡大

核融合、次世代原子炉、ペロブスカイト太陽電池などの先端領域で国家支援が強化されることで、関連技術や部材供給など、中小企業が参入できる可能性が高まります。中小企業は新技術分野で応用できる自社技術を明確化していくことが重要です。

・サプライチェーン再編・強化

国内製造サプライチェーン構築支援の拡充により、部材調達や地場企業との連携が見直され、国内サプライチェーンの役割が拡大する可能性があります。エネルギー関連インフラの更新や新技術導入でも、地域企業の参画が求められる場面が増えると想定されます。国内需要の増加が見込まれる領域を見極め、品質管理や納期対応力の強化など、サプライチェーンの要請に応えられる体制づくりが不可欠になります。

・コスト・競争圧力の変化

再エネ補助金の選別強化や外国製パネル依存の縮小方針により、既存モデルに依存していた企業には負荷が生じる可能性があります。特に、メガソーラー関連や輸入部材を扱う事業者は制度変更に対応した事業の見直しが求められる場面が増えます。一方で、省エネ性能の高い設備への更新を支援する省エネ補助金においては、昨年度よりもGX支援対策費予算額が大幅に増額しており、中小企業の省エネ投資の後押しになると見られます。

 

まとめ

高市新内閣の脱炭素政策は、総合経済対策や補正予算を通じて、GXを成長戦略として本格的に実行段階へ移す局面に入っています。中小企業にとって、GXは補助金・新市場・取引機会を活用した成長機会であると言えます。今後の政策動向を注視しつつ、自社の設備投資や事業戦略にどう結び付けるか検討してみていただけたらと思います。

 

【参考資料】
(令和7年度)
・経済産業省関係令和7年度補正予算案の概要
https://www.meti.go.jp/main/yosan/yosan_fy2025/hosei/pdf/r7_gaiyo.pdf
・令和7年度補正予算におけるGX支援対策費関係事業の概要
https://www.meti.go.jp/main/yosan/yosan_fy2025/hosei/gx/pdf/r7_gx_pr.pdf

(令和6年度)
・経済産業省関係令和6年度補正予算の概要
https://www.meti.go.jp/main/yosan/yosan_fy2024/hosei/pdf/r6_gaiyo.pdf
・令和6年度補正予算におけるGX支援対策費関係事業の概要
https://www.meti.go.jp/main/yosan/yosan_fy2024/hosei/gx/pdf/r6_gx_pr.pdf

 

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