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コラム

2025.12.05

COP30の内容と中小企業への影響について解説します!

2025年11月10日から22日まで、ブラジルのベレンで第30回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP30)が開催されました。地球温暖化のリスクが深刻化する中、今回のCOP30は、パリ協定が採択されたCOP21から10年の節目として「1.5℃目標をどう実現するか」が大きな焦点となりました。
中小企業にとって脱炭素は、もはや社会的責任にとどまらず、競争力や資金調達といった経営課題に直結する重要なテーマです。今回は、COP30の内容と中小企業への影響を解説します。

 

 

COP30とは

COP30は国連気候変動枠組条約(UNFCCC)に基づく第30回締約国会議で、190か国以上の政府代表が参加しました。今回のCOP30が注目を集めた理由は、次の3点にあります。

①パリ協定採択から10年の節目

2015年のCOP21で採択されたパリ協定は、世界の平均気温上昇を1.5℃以内に抑えることを掲げています。2025年は各国が排出削減目標を更新する年にあたり、COP30は「次の10年間の行動を方向づける会議」として位置づけられました。

②実装の時代へのシフト

国際社会では、これまで宣言や方針が中心でしたが、COP30では「実装」がキーワードになりました。各国が実際に排出削減を進めるための資金、技術、制度の整備が求められ、行動の強化が議論の中心となりました。

③開催地ベレン(アマゾン)の象徴性

アマゾンは世界最大のCO2吸収源でありながら、森林減少や違法伐採が深刻化しています。今回の開催地がベレンであったことで、森林保全・自然資本の議論が前面に押し出され、気候変動と自然保護を一体で進める必要性が強調されました。

こうした背景により、COP30は「行動の10年」のスタートラインとしての意味を持つ会議となりました。

 

世界の脱炭素動向

今回の議論では、化石燃料の扱いに各国の立場の違いが強く表れました。
EUなど80か国以上が石炭・石油・ガスの「段階的廃止」を合意文に盛り込むことに賛同しましたが、サウジアラビアやロシアなどの産油国は、自国経済への影響を理由に強く反発しました。最終的に、化石燃料からの脱却に向けた工程表は合意文書から削除され、複数国が異議を表明しました。
一方で、気候災害への備えを強化するため、途上国向けの適応支援資金を現在の3倍に増額する方針が合意されました。これはCOP30の主要成果のひとつと評価されています。

また、アマゾンを中心に森林保全が主要テーマとなりました。アマゾンをはじめとする森林は巨大な炭素吸収源であり、森林減少の抑制は地球全体の脱炭素戦略に直結します。会議では、違法伐採対策、森林減少ゼロへの取り組み、先住民族の権利保護、自然を活用した炭素削減(ネイチャー・ベース・ソリューション)の推進などが議論され、自然資本への投資拡大の重要性が改めて強調されました。

このようにCOP30では、化石燃料依存国との意見対立など、依然として課題が大きいことが明らかになりました。気候危機が深刻化する中、国際社会は「加速」と「公正」をどう両立させるかが問われています。

 

中小企業への影響

日本は高市首相に代わり環境大臣が出席し、自然共生や技術による排出削減を目指す「日本の気候変動対策イニシアティブ2025」の中でCO2削減目標を堅持する姿勢を示しました。さらに、議長国であるブラジルと共に「ベレン持続可能燃料4倍宣言」を行い、2035年までに持続可能燃料の需要を4倍以上に拡大することを目標として提案しました。バイオ燃料やその他新技術への投資も行うことで政府として削減を継続していく方針であることから、補正予算でのGX対策費含め、国内での脱炭素支援施策は今後も手厚くなっていくことが予想されます。こうした流れに乗って国内の中小企業も脱炭素を進めていくことで様々なチャンスが得られる可能性があります。

①サプライチェーンからの選別

国際的な流れは大企業の動き方に大きな影響を及ぼします。世界的な脱炭素の促進により、大企業は自社の排出削減に貢献できるサプライヤーを選ぶ傾向が強まることが予想されます。品質や価格だけでなく、CO2排出量の算定・開示に対応できない中小企業は取引の土俵に乗れなくなるリスクがあります。

②コスト・規制リスクの顕在化

脱炭素政策が進むと、エネルギー・燃料・原材料の価格転嫁や、CO2排出量の報告義務・排出量取引制度への対応など、コスト・負担が顕在化します。COP30で「実装」が強調されたことから、時間的猶予は縮まっていると捉えるべきです。

金融機関の融資基準が変わる

脱炭素投資を支える気候資金が国際的な議題となったことで、省エネ設備や高効率な工場機器への投資に対し、有利な融資・補助金制度が広がる可能性があります。環境経営に関する開示が金融支援の条件となることが増えていく可能性があります。

 

まとめ

COP30はパリ協定採択から10年の節目に開催され、世界が「行動の10年」を本格的にスタートさせる会議となりました。森林保全や自然資本の活用、途上国支援の強化など、脱炭素を具体的な行動や投資と結びつける議論が前面に出たことが特徴です。一方で、化石燃料依存国との対立が示すように、国際的な合意形成には依然として課題も残されています。中小企業にとって、COP30の成果は経営に直結する大切なヒントです。自社の脱炭素戦略に反映させ、積極的に取り組んでいきましょう。

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