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コラム

2025.11.21

大阪・関西万博でも注目のCO2吸収コンクリートとは?

近年、「脱炭素」をキーワードにした新技術が次々と登場しています。その中でも特に注目されているのが「CO2吸収コンクリート」です。
10月に閉幕した大阪・関西万博では、パビリオンや歩道などの一部でこの素材が採用されていました。従来のコンクリートは製造時に多くのCO2を排出していましたが、この新しい技術は「コンクリートがCO2を吸収する」という逆転の発想で注目を集めています。今回は、CO2吸収コンクリートの仕組みや市場動向、そして中小製造業への影響について解説します。

 

CO2吸収コンクリートとは

コンクリートは、セメント・砂・砂利・水を混ぜて作られます。このうちセメントの製造過程では、石灰石(炭酸カルシウム)などを高温で加熱して冷却する過程で、大量のCO2が発生します。セメント産業におけるCO2排出量は、約3,300万t(2023年度)であり、建設業界における脱炭素化は喫緊の課題です。
そこで、CO2吸収コンクリートは、この課題を解決するために開発された新素材であり、日本の排出量削減に大きなインパクトを与えることが見込めます。
主な仕組みは、製造時または硬化時にCO2を反応させ、コンクリート内部で炭酸カルシウムとして固定化するというものです。いわば、コンクリート自体が「CO2を閉じ込める装置」として機能します。CO2を吸収することによってコンクリートの耐水性・耐久性が向上するという特徴を持ち、今後の活用が期待されています。

大阪・関西万博にてCO2排出量を70%削減した「サステナドーム(CUCO-SUICOMドーム)」


(出典)鹿島建設株式会社 https://kajima-expo2025.jp/2025/pavilion-01.html
(参考)一般社団法人セメント協会 https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/gx_jikkou_kaigi/carbon_pricing_wg/dai2/siryou2.pdf

 

市場動向

CO2吸収コンクリートは、脱炭素社会の実現に向けた重要技術として、国内外で市場が拡大しています。
経済産業省が2020年度に設立した「グリーンイノベーション基金」は、国の支援策として開発を後押ししています。この基金は、最長10年間にわたり、研究開発・実証から社会実装までを継続して支援するものです。
世界的にも、欧州や北米でCO2吸収型コンクリートの実用化が進んでいます。カナダのCarbonCure社やアメリカのSolidia社は、CO2を製造工程に取り込む技術で実績を上げており、国際的にライセンスビジネスを展開し始めています。
日本国内では、建設各社が実証実験を進めており、鹿島建設株式会社の「CO₂-SUICOM」などが代表的な技術です。この技術は、実際に高速道路の橋脚工事などに実用化されています。
CO2を再利用したコンクリート製品の市場規模は、2030 年までに世界全体で約 15~40 兆円に急拡大すると予想されており、今後国際的な技術競争が本格化していくことが見込まれています。

(参考)資源エネルギー庁
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/green_innovation/energy_structure/pdf/025_03_00.pdf
https://www.meti.go.jp/policy/energy_environment/global_warming/gifund/gif_09_randdr.pdf

 

中小企業への影響

CO2吸収コンクリートの普及は、建設資材や機械部品を支える中小製造業にも影響を及ぼします。
まず、大手ゼネコンや建材メーカーがグリーン調達を進めており、環境配慮型素材や省エネ加工品を扱う企業が選ばれやすくなっています。建築業や建築部材を製造している企業は軽量化や再生材の活用など、設計・加工の段階での工夫が競争力につながります。
また、CO2吸収コンクリートの製造では、高圧CO2注入装置などが必要となり、耐圧部材や精密フレームなど金属加工技術の活躍の場が広がります。装置メーカーとの試作・共同開発などを行うことができれば、新たな取引の可能性が広がります。
さらに、自社のCO2排出量を見える化し、省エネや効率改善に取り組むことで、取引先からの信頼性向上にもつながります。脱炭素への対応は、コストの増加ではなく、次世代の市場で生き残るための投資といえます。

 

まとめ

CO2吸収コンクリートは、従来の「排出するコンクリート」から「吸収するコンクリート」へと発想を転換させた画期的な技術です。大阪・関西万博を契機に注目度が一段と高まっており、今後、公共事業や都市開発、民間建築にも広く展開されていくことでしょう。
中小製造業にとっては、取引先の脱炭素化ニーズに対応するだけでなく、自社の環境対応を強みとして打ち出す機会となり得ます。CO2吸収コンクリートをはじめとする新技術の動向を早めに把握し、ものづくりの現場から自社の技術と環境対応を掛け合わせた新しい価値づくりに挑戦していきましょう。

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