「環境への配慮が大事」とよく耳にするけれど、実際にどんな取り組みが求められているのでしょうか?最近では、企業にも“脱炭素”の流れが広がっていて、国をまたぐルールも登場しています。
近年、気候変動対策として、世界中の企業に求められる環境への配慮がますます強まっています。特に、欧州連合(EU)は、炭素排出量の多い産業への圧力を高め、国境を越えた環境政策を強化しています。その一環として、CBAM(シーバム)という制度が導入されました。今回は、CBAMとはどういった制度なのか?EUでの導入によって日本の中小企業にどのような影響が及ぶ可能性があるか? について解説します。本コラムの情報は2025年6月時点の情報であり、今後更新される可能性があります。最新の情報は経済産業省や日本貿易振興機構(JETRO)のホームページをご確認下さい。
CBAM(Carbon Border Adjustment Mechanism : 炭素国境調整措置)は、EUが2023年から導入を進める新しい炭素規制です。これは、EU域外から製品を輸入している事業者に対して、その製品プロセスで排出されたCO2の量に応じてCBAM証明書の購入を義務付けることで炭素コストを課す仕組みです。CBAM証書の価格はEUの排出量取引制度EU-ETSの価格と連動しており、2025年6月30日時点で1tあたり約69ユーロ(約1万1600円)でした。国内製品と炭素税の規制が緩い国からの輸入品との競争条件を均等化し、国内生産の減少を防ぐという目的があります。
炭素税について詳しくは以下のコラムをご覧ください。
「自民党総裁候補者の河野氏、小泉氏が触れた炭素税について、わかりやすく解説します。」
https://www.co2-hikaku.com/column/1685/
CBAMは2025年12月31日まで移行期間に入っており、この期間中は、実際に炭素コストの支払いは発生しないものの、製造された製品ごとの排出量報告が義務付けられています。現在CBAMの対象となる品目は「鉄鋼」「アルミニウム」「セメント」「肥料」「電力」「水素」とされています。「鉄鋼」にはねじやボルトといった鉄鋼加工製品も対象とされているため、こうした部品製造を行っている製造業の方はCBAM報告の対象となる可能性があります。今後対象品目が拡大される可能性も考えられるため、最新の情報を確認するよう注意してください。また、2025年6月18日、EU理事会と欧州会議はCBAM規則の簡素化に対して合意に達したと発表しており、これにより、CBAM対象製品の年間輸入量が50トン未満の事業者はCBAM報告対象外となりました。
またCBAMに関する報告では、製品ごとに次のような情報を提出する必要があります。
・製造工程におけるCO2の直接排出量
・使用電力等に由来するCO2の間接排出量
・サプライヤーから調達した原材料等のCO2の排出量情報
CBAMの対象事業者は、EU域外から対象製品を輸入するEU域内の事業者となっていますが、製造プロセスにおけるCO2排出量は生産企業によって管理されるものであるため、実質的には輸入側からの要請を受けて輸出側に負担が及ぶことになります。EU域内の輸入事業者は四半期に1度、排出量に応じたCBAM証書を購入する必要があるため、輸出側も四半期に1度の頻度で排出量を算定する必要があります。また、製品をEU内に直接輸出していなくても、大企業や輸出企業の製品製造プロセスに自社の製品・部品が含まれている場合は、CO2排出量の開示を求められる可能性があるため、中小企業にも間接的に報告義務が波及するということが考えられます。
すでに現場では、CBAMへの対応が求められています。実際に、EU域内に工場を持ち、鉄鋼製品をEU域内に輸出している日本のメーカーから、「輸出先の工場からCBAMへの対応を求められたが、何をすればいいのかわからない」という相談がゼロプラスに寄せられました。
CBAMへの対応では、CO2排出量の正確な算定や、サプライチェーン全体を視野に入れた情報の管理など、複雑で専門性の高い作業が求められます。たとえば、報告に必要な入力項目の明確化や、直接・間接排出量の区別といった具体的な項目に対して、正確かつ効率的な対応が必要です。また、自社だけでなく、サプライヤーや外注先を含む排出範囲の確定や、最終的な報告に向けた妥当性のある計画策定も重要な課題です。
ゼロプラスでは、上記の相談を受けて、CBAM対応に関する支援体制の構築を進めています。定期的なミーティングを通して必要なデータの整理や算定根拠の妥当性の検証など、定量的な側面からの支援を提供できるよう体制を整えていきます。また、CBAMは現在移行期間であることから、日々本格運用に向けて制度のルールが更新されています。常に最新の情報を押さえながら、CBAM報告を支援させていただきます。
CBAMは、EU域外からの輸入品に対して炭素コストを課す新制度であり、脱炭素の国際的な動向とリンクした重要な制度です。現在は移行期間であるものの、2026年からの本格導入に向けて日々制度のルールが変更されているため、EUへの輸出を行っている企業は自社がCBAMの対象となる可能性があることを頭の片隅に置いて、動向をチェックしておくと良いかもしれません。
今後、こうしたサプライチェーン全体での排出量の可視化・管理がますます重要になり、中小企業においても炭素情報を提供できる体制構築が取引維持のカギとなります。これからの時代、環境対応はコストではなく信頼の証として、企業競争力に直結する要素となっていくでしょう。
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