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コラム

2025.06.27
SBT

農業法人で中小企業版SBTを取得された事例をご紹介!FLAGセクターとは?

小泉農林水産大臣により備蓄米の市場への放出が加速されましたが、皆様の近くのスーパーでは、お米の価格に変化はありましたでしょうか。とはいえ、一番気になるのは銘柄米のお値段なので、もう少しお手頃になってほしいと願うばかりです。

さて、SBTには、農業や林業といった土地利用に深く関わる企業向けに、「FLAGセクター」という専門の枠組みが設けられています。通常、このセクターの企業は専用の手順でSBT認証を取得する必要がありますが、特定の条件を満たす中小企業であれば、簡略化された手順で認証取得できることをご存知でしょうか。実際に、このルートでSBTを取得した事例もありますので、今回は、FLAGセクターの概要から、該当する中小企業がSBTに取り組むための方法を解説します。
SBT HP:https://sciencebasedtargets.org/

 

FLAGセクターとは

SBTは、企業が科学的根拠に基づいて設定した温室効果ガス削減目標に対する国際的な認証です。SBT事務局は、セクター(業界・業種)ごとの特性に応じた削減目標を設定するために「セクター別ガイダンス」を提供しています。その一つであるFLAGセクターは、Forest(森林)、Land(土地)、Agriculture(農業)の頭文字を取ったもので、農業や林業など、土地利用に深く関わるセクターを対象としています。
SBTのFLAGセクターガイダンスでは、以下のいずれかの条件に該当する企業に対し、ガイダンスに沿った目標設定を求めています。

・特定の産業セクターに属する企業

森林・紙製品、農業生産、畜産、食品・飲料加工、食品・生活必需品小売、タバコ

・FLAG関連の排出量(scope1・2・3の合計)が企業全体の総排出量の20%を超える企業

容器・包装、繊維製造、ホテル、レストラン、家庭用品など

 

なぜFLAGセクター専用の目標設定が必要なのか

森林伐採や農地転用などの土地利用の変化は、森林や土壌に蓄えられたCO2を大気中に放出する一因であり、世界的に大きな問題になっています。SBTのFLAGセクターガイダンスでは、こうした土地利用変化に由来する排出量を科学的根拠に基づき算定し、削減目標へ組み込むことを求めています。
また、FLAGセクターは他のセクターと異なり、家畜のゲップや糞尿、水田などから強力な温室効果ガスであるメタン(CH 4)を排出する特性があります。その一方で、植林や適切な森林管理を通じて大気中のCO2を吸収・除去する重要な役割も担っています。こうした生物起源の排出や吸収・除去は、化石燃料の燃焼による排出とは性質が異なります。そのため、一般的なSBTの枠組みとは別に、排出量と吸収・除去量の両方をそれぞれ算定し、目標を設定することが不可欠となります。
このように、FLAGセクターは他のセクターにはない特有の複雑さを併せ持っているからこそ、その特性に合わせた専用のガイダンスで削減目標を設定することが重要なのです。

 

FLAGセクターに該当する中小企業の対応

こうした背景からFLAGセクターに該当する企業は、原則としてFLAGセクターガイダンスに沿った複雑な目標設定が求められます。しかし、中小企業においては、必ずしもそうとは限りません。
SBT事務局は、中小企業がよりSBTに取り組みやすくなるよう、簡略化された申請プロセスを設けています。これにより、FLAGセクターに該当する中小企業であっても、特定の基準を満たせば、簡略化された中小企業向けルートを利用してSBTの取得を目指すことが可能です。
弊社がご支援した中小企業の中にも、農業法人でありながら、SBTを取得された事例があります。現状、FLAGセクターでSBT認証を持つ企業は非常に少ないため、SBT取得後は、自治体や周りの企業から注目を集めています。この会社には、SBT取得について具体的に話を聞かせてほしいといった依頼が来ており、企業価値の向上に繋げることができました。

FLAGセクターに該当することでSBT取得をためらっているのであれば、中小企業向けルートの活用が可能かどうか、ぜひ以下の中小企業の適格基準をご参照ください。必須基準は全てを、選択基準は「FLAGセクターに分類されない」以外の全てを満たす必要があります。

【2025年6月時点】

(出典)SBTi SERVICESより作成https://sbtiservices.com/services/sme

 

まとめ

FLAGセクターは、世界の温室効果ガス排出量削減において非常に重要であり、今後ますます企業規模の大小に関わらず、積極的な取組みが求められるでしょう。中小企業においては、自社がFLAGセクターに該当するという理由だけで、SBTの取得を断念する必要はありません。最新情報に基づいて正しい知識を習得し、必要に応じて専門家に相談することで、自社の状況にあった最適な方法で脱炭素に向けた取り組みを始めてみてはいかがでしょうか。

 

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