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コラム

2025.06.13

炭素生産性って何?算出方法と活用例をご紹介します!

6月に入り、職場における熱中症対策が義務化されました。製造業や建設業では熱中症になりやすい環境での作業が多いため十分に注意が必要です。重篤化防止のために、初期症状への対処方法を社内で周知しておくようにしましょう。

さて、CO2排出削減のための活動を行っている中小企業が増えてきていますが、そうした取り組みに対する効率性を測る指標があることをご存知でしょうか。事業を拡大してCO2排出量が増えてしまっても、効率的な取り組みができていれば削減活動は順調に進んでいるといえます。こうした環境活動の効率性を図るのに活用できるのが「炭素生産性」という指標です。今回は炭素生産性について、概要と活用例、具体的な算出方法をわかりやすくご紹介します。

 

炭素生産性とは

炭素生産性とは、単位CO2排出量あたりどれだけの付加価値を生み出せるかを示す指標です。炭素生産性の数値が高いほど、少ないCO2排出で経済的価値を提供していることになります。
以下は、世界のGDPとCO2排出量の推移を示したグラフです。このグラフから分かるように、経済が成長していくにつれてCO2排出量も比例して増加する傾向にあります。つまり、業績が伸びると同時にCO2も多く排出してしまうのが一般的です。
炭素生産性を高めることで、事業成長と脱炭素推進の両立につながります。

内閣府経済社会総合研究所:
https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/kakuhou/files/h24/sankou/pdf/point20131225.pdf
https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/kakuhou/files/2023/sankou/pdf/kokusaihikaku_20241223.pdf
International Energy Agency CO2 Emissions:
https://www.iea.org/reports/co2-emissions-in-2023/emissions-grew-in-2023-but-clean-energy-is-limiting-the-growth
を基に作成

 

炭素生産性の活用例

では、炭素生産性はどのような場面で活用されるのでしょうか。以下に中小製造業における主な活用例を2つご紹介します。

 

・カーボンニュートラルに向けた投資促進税制

カーボンニュートラルに向けた投資促進税制は、脱炭素化と付加価値向上に寄与する設備の導入にあたり税制優遇を受けられる制度です。太陽光発電設備の導入に際しても活用することが可能で、最大14%の税額控除または50%の特別償却を受けることができます。中小企業の場合、炭素生産性を3年以内に10%以上増加させる投資計画の作成が必要です。
参考:経済産業省 https://www.meti.go.jp/policy/economy/kyosoryoku_kyoka/cn_zeisei.html

 

・ものづくり補助金グリーン枠の事業化状況報告

ものづくり補助金グリーン枠では、申請要件の1つにCO2排出量の測定・把握があります。採択企業は事業計画期間内に炭素生産性を年平均1%以上増加させる必要があり、事業化後5年間の事業化状況報告において炭素生産性の算出・報告が求められます。

このように、炭素生産性は企業の成長と脱炭素化を両立させる指標として、各種税制優遇や補助金の要件に設定されています。こうした申請・報告にあたり、炭素生産性の算出でお困りの方に向けて詳しい算出方法をご紹介します。

 

炭素生産性の算出方法

炭素生産性はCO2排出量あたりの付加価値を算出するため、「炭素生産性=付加価値額÷CO2排出量」という計算式で求められます。
以下、A社の2024年度のデータを使って炭素生産性を一緒に計算してみましょう。

 

①付加価値額

まず初めに、A社の付加価値額を計算します。
付加価値額は、「付加価値額=営業利益+人件費+減価償却費」という計算式に当てはめて算出します。
800万円+6,000万円+1,000万円=7,800万円

 

②CO2排出量

次にCO2排出量を計算します。CO2排出量は「CO2排出量=エネルギー使用量×排出係数」という計算式で算出します。排出係数は、環境省のホームページで公開されています。電力の排出係数は年度や電力会社によって異なり、燃料やガスについても数値が更新される場合があるため、適切な数値を確認するようにしましょう。
環境省HP:https://policies.env.go.jp/earth/ghg-santeikohyo/calc.html

ガソリン使用によるCO2排出量は、ガソリン使用量にガソリン排出係数0.00229t-CO2/Lを乗じて算出します。
3,000L×0.00229t-CO2/L=6.87t-CO2

電力使用によるCO2排出量は、電力使用量に電力排出係数を乗じて算出します。今回は、東京電力エナジーパートナー㈱から電力を購入していると仮定し、排出係数を0.000431 t-CO2/kWhとします。
100,000kwh×0.000431 t-CO2/kWh=43.1t-CO2

A社のCO2排出量は、ガソリン使用と電力使用によるCO2排出量の合計となります。
6.87t-CO2+43.1 t-CO2=49.97 t-CO2

 

③炭素生産性

①と②で求めた結果から、A社の炭素生産性は、
7,800万円÷49.97t-CO2≒156万円/t-CO2 となります。

 

1年分のCO2排出量を算出するためには、1年間の請求書や明細書から使用量を取得する必要があります。自社で使用しているすべてのエネルギーデータを収集する必要があり、1年間分をまとめて作業しようとすると、膨大な作業量になることもあります。また、毎年更新される排出係数を探す手間もかかります。
このような課題を解決するため、私たちが提供しているCO2排出量モニタリングサービス「ゼロモニ」では、毎月エネルギー使用量を入力することで、CO2排出量を自動的に算出することができます。実際にものづくり補助金グリーン枠の事業化状況報告に活用された企業もいらっしゃいます。CO2排出量の算出が面倒だと感じる方は、こうしたITツールの活用も検討してみてはいかがでしょうか。
ゼロモニ:https://www.co2-hikaku.com/support/

 

まとめ

炭素生産性は、いかに少ないCO2排出で経済活動を実施できているかを示す指標です。税制優遇や補助金受給における要件に設定されるなど、中小企業が事業成長と脱炭素活動を両立するための重要な指標となっています。炭素生産性の算出や改善にお悩みの方は、私たちにお気軽にご相談ください。

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