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コラム

2025.05.30

脱炭素に取り組む方は注意!グリーンウォッシュについて事例も含めて解説します!

大阪・関西万博の開幕から1ヶ月が経過し、メディアを通じて会場やパビリオンの様子が報じられる機会が増えています。開幕初日はあいにくの雨で入場トラブルなどが多く報じられていましたが、未来技術を体験したり、世界各国の文化に触れたりすることができるので、日本開催のこの機会に一度は訪れてみたいという気持ちが高まってきました。

さて、最近CMや街頭広告で「CO2フリー」「環境に優しい」「カーボンニュートラルな○○」という表現をよく見かけませんか?こうした広告を見かけると、その企業に対して脱炭素に積極的であるという印象を持つと思います。しかし、中には根拠のない状態で環境配慮を謳っている広告も存在し問題となっています。今回はこのグリーンウォッシュという課題について解説します。

 

グリーンウォッシュとは

グリーンウォッシュとは、実際には環境に配慮した活動を行っていないにも関わらず、環境に優しい取り組みを行っているかのように見せかけることを指します。こうした見せかけの環境配慮を行う企業や団体が増加することにより、脱炭素への信頼性の損失につながり、積極的に環境配慮を行っている団体の努力が無駄になってしまいます。「環境に優しい」といった文言は曖昧な印象を与えることがあるため、その根拠となる情報をともに掲載する必要があります。
以下の表はロンドン・スクール・オブ・エコノミクスが公開している、気候に関する訴訟件数をまとめたものです。この結果から、2021年以降訴訟件数が急激に増加していることが分かります。


出典:London School of Economics and Political Science
https://www.lse.ac.uk/granthaminstitute/wp-content/uploads/2023/06/Global_trends_in_climate_change_litigation_2023_snapshot.pdf

グリーンウォッシュは消費者や取引先を欺く行為であり、結果的に環境問題の悪化につながる可能性があるとして世界的に対策が進められています。EUでは2024年にグリーンウォッシュを禁止するグリーンクレーム指令が採択されており、2026年3月27日までにEU加盟国の国内法として成立する予定です。

 

グリーンウォッシュの実例

EUではグリーンウォッシュの取り締まりが強化されていますが、日本国内においても過去にグリーンウォッシュを指摘された企業があります。
この企業はエネルギー事業を行っており、自社HPにてアンモニア混焼による発電を「CO2が出ない火」による発電という表示を行っていたところ、これがグリーンウォッシュにあたるとNPO法人などから指摘されました。アンモニアを燃焼しても発生するのは窒素と水素のみでCO2は発生しないため、発電時のCO2排出量を削減できるというのが企業の立場でした。しかし、発電時にはCO2を排出しないとしても、アンモニアは製造時と輸送時に大量のCO2が排出されるという点が指摘されました。「CO2を排出しない」という表現は、すべての工程においてCO2の排出が無いという印象を与えてしまいます。一部の工程のみに該当するのであればその旨を併せて表示し、誤った印象を与えないようにする必要があります。

 

国内での取り締まり

現在、日本ではグリーンウォッシュを取り締まるための規制は策定されていませんが、グリーンウォッシュにあたる行為は景品等表示法第五条違反に該当する可能性があります。景品等表示法第五条は、商品が実際のものよりも著しく優良であると示すものにより、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがある表示を禁止しており、実際に景品等表示法違反として取り締まりが行われた事例があります。
2022年、あるカトラリー販売事業者に対し、消費者庁より不当表示による措置命令が出されています。この企業では「堆肥化可能な生分解性カトラリー」「約三か月で土に還ります」のように生分解性を有していると思わせる表示を行っていました。しかし、裏付けとなる根拠が示されなかったことから、該当表示の取りやめや景品表示法に違反する旨の周知徹底等の措置を命じられました。

 

まとめ

年々脱炭素への意識が高まるとともに、見せかけの環境配慮も増加しています。日本では本格的な規制は行われていませんが、景品等表示法によるグリーンウォッシュへの取り締まりが始まっています。WWFなどの国際環境保護機関でも、今後取り締まりを強化していく方針を固めており、世界的に注目度が高まってくると見られます。グリーンウォッシュについて知識として頭の片隅に入れておき、今後の世界的な動向に注目していきましょう。

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