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コラム

2025.01.24

CO2削減価値の価格高騰…脱炭素化意識の高まりと今後について解説!

脱炭素化に向けた取組みが年々加速していく中で、企業はあらゆる手段を使ってCO2排出量の削減に努めています。そのうちの一つに、CO2削減価値の取引がありますが、東京証券取引所によると、CO2削減価値をクレジット化したカーボンクレジットの価格が1年で2倍に高騰しているとのことです。今回はCO2削減価値の価格高騰の原因や今後の予測について解説していきます。

 

CO2削減価値とは

「そもそもCO2削減価値の取引って何?」という方も多いかと思うので簡単にご説明します。企業や自治体がCO2の削減量や吸収量を「カーボンクレジット」という形で売買することができる仕組みがあります。カーボンクレジットを購入した企業は、そのクレジットが持つ削減量や吸収量で自社のCO2排出量を相殺することができます。例えば、10t分のカーボンクレジットを購入した場合、自社のCO2排出量の合計から10t差し引くことができるという仕組みです。カーボンクレジットの価格は、市場の動向や国の政策など様々な要因によって変動します。詳しくは過去のコラムにて紹介しているのでこちらをご覧ください。

「温室効果ガス排出をゼロにできる!?J-クレジットについてわかりやすく解説!」
https://www.co2-hikaku.com/column/1092/

「Jクレジット制度、グリーン電力証書の違いについて解説!」
https://www.co2-hikaku.com/column/1581/

 

価格高騰の原因

では、一体なぜカーボンクレジットの価格が高騰しているのでしょうか。カーボンクレジットは、削減しきれなかったCO2排出量を相殺したいという企業が購入することが多く、今回の場合はCDPへの報告※1やSHK制度※2等、CO2排出量の報告が必要となる企業が報告前に駆け込みで購入したと見られています。これにより、需要に対する供給量が不足したことで2024年6月頃にカーボンクレジットの価格が上昇しました。その後も価格は上昇し続け、同年11月には1tあたり約6,000円となり、前年の平均価格の2倍まで上昇することとなりました。6月の価格上昇を見た企業が更なる価格の上昇を恐れて購入を急いだり、1年のCO2排出量の目標を達成するために駆け込みで購入したりしたことから、このような継続的な価格の高騰が起こったと考えられます。

※1.CDP(Carbon Disclosure Project)への報告とは、投資家や取引先に対して環境対応の透明性を示すために、企業がCO2排出量や気候変動対策についてCDPを通じて開示することです。

※2.SHK制度(Santei・Houkoku・Kouhyou)とは、年間エネルギー使用量が原油換算1,500kL以上の事業者に対し、温室効果ガス排出量の算定(S)・報告(H)・公表(K)を義務付ける制度のことです。

出典:https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00707/010600001/

 

今後も価格上昇は続くのか

今回1年間で2倍もの価格上昇が見られたカーボンクレジットですが、今後も価格は上昇し続けるのでしょうか。

出典:https://www.jpx.co.jp/news/2040/20241011-02.html

東京証券取引所の発表によると、カーボンクレジットの利用者や購入量は毎年増加傾向にあり、年々注目度が高まっていると言えます。この背景には、脱炭素化への意識の高まりに加えて、2050年のカーボンニュートラル達成を目指している日本政府が、GX政策の一環としてカーボンクレジット市場の整備を行っていることが挙げられます。政府が2026年度より、一部の企業に対して排出量取引制度を義務化する方針を掲げていることから、今後カーボンクレジット市場の活発化が見込まれます。初期段階では需要の急増により今回と同じような価格高騰が起こる可能性がありますが、供給拡大や技術革新、政策の成熟によって、中長期的には価格の安定化が期待されます。

 

価格変化による影響

カーボンクレジットは様々な要因によって価格が変動します。価格が下がれば気軽に購入しやすくなり、価格が上がればコストが増える原因となります。CO2排出量削減に向けた取組みを積極的に行わず、カーボンクレジットで解決しようと考えていると、価格が高騰した際に思わぬコスト負担を引き起こします。

自社ではカーボンクレジットを購入する予定はないから価格高騰は関係ないと思う方もいるかもしれませんが、一概にそうとは言い切れません。サプライチェーン内の原材料供給元や物流業者がカーボンクレジットを大量に購入していたとしたらどうでしょうか。価格高騰に伴い製品価格や輸送費にコストが転嫁されることで、自社のコスト負担の増加につながります。

カーボンクレジットはむやみに購入するのではなく、最大限の削減努力を行ったうえで、削減しきれない分のみ相殺するというように計画的に利用することが求められています。自社はもちろんサプライチェーン全体でそうした意識をもって取り組むことが大切です。

 

まとめ

需要に対する供給量が圧倒的に少なかったことが招いたカーボンクレジットの価格高騰は、別の視点で見ると脱炭素化やカーボンクレジットに対する注目度が高まっているということでもあります。政府による市場の整備が行われることで価格の安定化が期待されますが、今回と同様に需要が急増する可能性も十分に考えられます。安定した経営の中で脱炭素化を目指すために、日ごろからCO2削減に向けた取組みを実施していきましょう。

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