製造業にとって環境への配慮は避けて通れない課題であり、脱炭素経営に向けて省エネ活動を進められていることと思います。一方で、省エネ設備への投資は大きな費用がかかり、二の足を踏んでいる方も多いのではないでしょうか。そこで、注目したいのが「サステナビリティ・リンク・ローン(Sustainability Linked Loan, SLL)」という新しい融資の形です。本コラムでは、この融資が中小製造業のみなさまにどのように役立つのか、わかりやすく解説します。
サステナビリティ・リンク・ローン(SLL)とは、みなさまの会社が「こんな環境に良いことをします!」と目標を立て、それを達成すると金利が下がる可能性のある融資です。例えば、「3年後までに会社全体のCO2排出量を10%削減します」と目標を立て、この目標を達成した場合は金利引下げが実施されます。
中小製造業にとって、環境対応にたいする費用の負担が大きいため、SLLを利用することで財務的な負担を軽減しながら持続可能な成長を目指すことができます。日本では2019年に初めてSLLが利用され、2020年にガイドラインが策定されて以降は、SLLを活用する企業が増えています。
【国内のサステナビリティ・リンク・ローン組成額の推移】
https://greenfinanceportal.env.go.jp/loan/sll_issuance_data/sll_market_status.html
まず、SLLを扱っている地元の銀行や信用金庫を探します。既に取引のある銀行に確認し、取り扱いがなければ、環境省が公表している「国内におけるサステナビリティ・リンク・ローン組成リスト」に掲載されている銀行に相談するとご案内いただけるかもしれません。
国内におけるサステナビリティ・リンク・ローン組成リスト
https://greenfinanceportal.env.go.jp/loan/sll_issuance_data/sll_issuance_list.html
次に、銀行と相談しながら、自社に合った環境目標と目標達成の期限、どのようにして進捗を測るかを決めます。環境目標を達成しなければ金利を下げることはできないため、環境目標の設定と同時に、どのような取組みをすれば目標を達成ができるのかも考えておきましょう。例えば、3年以内にCO2レーザ加工機をファイバーレーザ加工機に更新することで、ブランク工程のCO2排出量を75%下げて、会社全体のCO2排出量を10%削減するといった具合です。
その後、銀行と契約を結び、お金を借ります。お金を借りている間は、定期的に目標の進捗状況を報告し、目標を達成していれば金利を引き下げることができます。
SLLを利用するメリットは、主に3つあります。
①環境に配慮した企業として、銀行からお金が借りやすくなります。
②目標を達成することができれば、通常よりも金利を引き下げられます。
③環境への取り組みが評価され、取引先からの信頼が高まる可能性があります。
銀行との契約条件によっては、環境目標を達成できなかった場合に、通常よりも金利を引き上げられる可能性があります。そのため、無理のない、かつ意義のある目標を設定することがポイントです。また、定期的な報告を求められるため、CO2排出量を管理する体制も必要です。
自動車用金型加工業者の有限会社大久保鉄工所(岡山県倉敷市、売上高1.79億円)は、株式会社中国銀行のサービス「ちゅうぎんサステナビリティ・リンク・ローン」を活用し、「売上高あたり電力調達量の削減率を毎年1%削減する」目標を掲げて、4,650万円の融資を受けています。
ちゅうぎんサステナビリティ・リンク・ローンの実行について
https://www.chugin.co.jp/assets/media/2023/06/230630_2-1.pdf?07e3438a8d963687f9ef07978b351907
この事例は、中小製造業であってもSLLを活用して資金を調達できることを示しています。
サステナビリティ・リンク・ローンは、脱炭素経営を進める上で、有用な資金調達手段といえます。環境への取り組みと経営改善を同時に進められる可能性があり、中小製造業にとっても大きなチャンスとなるでしょう。まずは御社の取引銀行に相談してみてはいかがでしょうか。環境に良い取り組みは、きっと会社にも良い結果をもたらします。一緒に、持続可能な社会の未来を作っていきましょう。
複雑なCO2排出量の計算を、
簡易的に行う診断ツールです。
詳細なモニタリング診断も行う
サービスも用意しています。
面倒な入力なしで最短30秒!
詳細を送ってCO2排出量を可視化